「第6次エネルギー基本計画」の方向性(その3)

1.はじめに

    昨年10月13日以降、下表のとおり、「第6次エネルギー基本計画」策定に向けた議論が進められています。目下、今年8月の閣議決定に向けて概ね月1回の頻度で開催されています。

    経済産業省は3月11日、第38回総合エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長:白石隆熊本県立大学理事長)を開催しました。

    今回、議論されたテーマは「2030年に向けたエネルギー政策の在り方」で、どのような絵姿を目指し、政策措置などが必要か、また、国際動向(G7やCOP26等の国際会議)も注視しながら検討を加速する必要があるとして、エネルギーの安定供給について整理するととともに、資源・燃料政策の対応の方向も示し、議論が展開されました。




2021年における主な国際スケジュール



2.エネルギーの安定供給の確保

①エネルギーの安定供給の確保については、海外への依存度を下げながらも、国内への安定的な調達を確保し、国内におけるエネルギー供給を断絶させないことが重要。エネルギー源間のポートフォリオの技術動向も踏まえ適切に構築していく必要がある。 「今後、カーボンニュートラルを目指し、再エネの主力電源化や水素・アンモニアなどの新たなエネルギー資源の活用、需要側におけるエネルギー転換など、エネルギー需給構造はこれまでにない変化が生じることとなるが、そうした中にあって特に安定供給の確保とレジリエンスの強化を図っていく上で留意すべきことはなにか」(配布資料より抜粋)

②海外においては、石油・天然ガスの安定供給確保に向けて、国際情勢の変化の対応力をさらに高めるため、供給源のさらなる多角化を図るとともに、海外権益の獲得と国内資源開発の推進を通じて、自主開発をさらに推進(自主開発目標の引き上げ)する。

エネルギーレジリエンス(海外)

(出所)経済産業省資料

③国内においては、全体として、大規模停電が発生した際に、石油製品を融通するなど、エネルギー供給途絶を避ける協力体制の強化を引き続き推進、石油では必要な原油備蓄を維持し、災害時に備えて重要インフラに適切な備蓄を行うとともに、製油所・油槽所やSSの設備自身のレジリエンス向上を進める。

エネルギーレジリエンス(国内)

(出所)経済産業省資料


3.資源・燃料政策

①2050年の「カーボンニュートラルへの移行」という大きなチャレンジを実施するため、
(ⅰ)石油・天然ガスなどの安定供給の確保、(ⅱ)金属鉱物資源の安定供給の確保、
(ⅲ)脱炭素燃料・技術の導入・拡大に向けたイノベーションの推進―の3つを柱とする。

    また、3E+Sの原則の下で、これらを一体的に推進するため、石油・天然ガス・金属鉱物資源等の安定供給確保・緊急対策を充実させることは大前提であるが、
(ⅰ)化石燃料及び金属鉱物資源だけでなく、脱炭素燃料(水素・アンモニア・合成燃料等)にまで政策の対象を拡大する、(ⅱ)資源・燃料の上・中・下流だけでなく、脱炭素技術(カーボンリサイクル・CCS=CO2の回収・貯留等)にまで政策の対象を拡大する。この2つの方向で、資源・燃料政策を拡大し、一体的に推進していく。

②石油・天然ガスの方向性は、上流開発で、さらなる多角化、自主開発比率目標の引き上げ、LNG市場の流動化やLNG外・外取引(日本企業の日本向け以外の取引)の拡大、国内資源開発の前倒し等。

③備蓄では、現状の石油備蓄水準(日数ベース)の維持と産油国・アジア消費国との協力強化等。精製では、石油精製・元売業の生産性向上・競争力強化、製油所等の災害対応能力の向上、水素・合成燃料等の取組の促進等。流通では、SSやLPガス中核充填所の災害対応能力の向上、重要施設の燃料備蓄の促進、経営力向上・経営多角化・デジタル化の促進、 SS過疎地や離島における検討の後押し、EV充電器や水素ステーション設置の後押し等。

④脱炭素燃料・技術については、「グリーン成長戦略」工程表等の計画に沿った技術開発・実証等の推進、イノベーションの加速のための計画の深掘り、商用化の加速のための公共調達等を活用した市場環境整備、技術開発状況に応じた標準化やサプライチェーン構築の推進等を重要とした。

今後の資源・燃料政策の主な課題と対応の方向性

(出所)経済産業省資料


(出所)経済産業省資料


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