「新国際資源戦略」(2020年3月)の課題と見直し(その2)
―2030年/2050年を見据えた石油・天然ガス政策の方向性―

1.はじめに

    経済産業省は2021年2月19日、「総合・資源エネルキー調査会資源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会」(小委員長:平野正雄早稲田大学商学学術院教授)第14回会合を開催しました。

    現行の資源戦略は2020年3月に取りまとめられましたが、その後のコロナ禍、脱炭素化の機運の高まり等の環境変化を踏まえ、上記小委員会で2020年12月18日、2021年2月15日、2030年/2050年を見据えた石油・天然ガスの方向性について見直しの検討が行われました。

    経済産業省は、今後のスケジュールについて、次回開催の資源・燃料分科会(第31回会合)に報告⇒中間整理(案)に基づいて、事務局にて更なる具体策を検討し、2021年春に再度、小委員会を開催し、報告書案を取りまとめ、第6次エネルギー基本計画に反映することとしています(「新国際資源戦略」(2020年3月)の詳細は(その1)を参照)。

    今回の第14回小委員会では、わが国及びアジアのカーボンニュートラル(CN)に向けた化石燃料の脱炭素化の課題と対応の方向性を整理するとともに、50年のCNを見据えた石油産業(中下流)の課題をも提示しました。

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(出所)経済産業省資料


2.対応の方向性

    今回の小委員会で検討された項目及び石油産業(中下流)の課題の概要は下記の通りです。

(1)日本企業の脱炭素化取組の支援

    国内外のCCS(二酸化炭素回収・貯留)事業などを通じて、上流開発の脱炭素化を促進するための支援策を検討。


(2)アシアの現実的なエネルギー移行支援

    LNG導入支援として、100億ドルファイナンス/キャパビル(キャパシティビルディン=能力の習得・構築の支援)、JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)等を通じて支援。

わが国及びアジアのCNに向けた化石燃料の脱炭素化の課題と方向性
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(出所)経済産業省資料


(3)包括的資源外交

    石油・天然ガスなどの従来資源に加え、将来的な水素、アンモニア、CCS適地といった新たな資源の権益獲得を狙って、これら新資源に関する協力案件も組成し、資源国との関係を強化、アジアのLNGインフラ市場でのビジネス機会の獲得をファイナンス面等から支援し、LNGの安定供給を確保。多国間の枠組みを通じた協力案件の組成や国際的なルールメイキングの3点を推進する。

(4)新時代における人材育成・獲得

    新時代における人材育成・獲得では、上流専業企業や商社、エンジニアリング会社などの既存業界に加え、他業界、発信力のある著名人などからなる検討枠組みを創設。 学生を引き付けられるような情報発信のあり方や、人材育成・獲得のための具体的方策を検討する。

包括的資源外交と人材育成・確保に向けた課題と方向性
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(出所)経済産業省資料


(5)石油産業の課題

    製油所やSSのグリーン化等で、従来の省エネだけではない取組みを進める必要、発電サービスや水素ステーションのビジネス性や設置コストなど、石油製品の供給を継続する中でのCNへの貢献、さらなる需要減少や担い手の問題により、地域内のSSの維持が困難になるリスクなどの課題。

石油精製・元売業における2050年カーボンニュートラルを見据えた主な課題
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SSにおける2050年カーボンニュートラルを見据えた主な課題
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(出所)経済産業省資料


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