LNGの不足が電力危機を招く

    昨年の12月下旬、複数の電力会社が一斉にLNG(液化天然ガス)を燃料とした火力発電所の出力を抑制し始めました。発電設備の障害が原因ではなく、燃料となるLNGが不足したことから、各社が燃料の消費量を抑える目的で出力を引き下げました。

    日本では、発電に使用する電源の内訳を示す電源構成のうち、LNGが占める割合が3~4割となっています。2020年7月の時点で36%でした。石炭が約3割、水力を含む再生可能エネルギーが2割強ですので、日本では現在、最も使用比率の高い電源となっています。

    このLNGが12月に入り足りなくなりました。電力会社の見込みに比べ電力需要が増える一方、LNGの供給が計画を大きく下回ったからです。日本では12月14日から17日にかけて、真冬並みの寒気が流れ込み各地で大雪を記録するなど例年に比べやや早く気温の低下が進みました。その後も19日から20日にかけて再び寒気が強まり、日本海側を中心に大雪となりました。各地で電力需要が増加し、発電量は電力会社が計画していた水準を上回り、LNGの消費も一気に進みました。

    半面、LNGの供給は、12月に入ってから落ち込みました。日本の電力会社は、一部の国産天然ガスを除き、火力発電所で使用するLNGのほぼ全てを輸入で賄っていますが、主な輸入先であるカタール、マレーシア、豪州の複数のLNGの生産基地で生産設備の障害が発生し、一斉にLNGの供給量が減少しました。日本の電力会社は輸入するLNGの約8割を長期契約で購入していますが、この契約に基づいた供給量が大幅に減少する事態に陥りました。

    日本の電力会社は、LNGの不足を石炭、重油で補おうとしましたが、電力会社の多くがここ数年、火力発電所における原油や重油の使用を大きく減らしてきたことから、石油会社による供給もすぐに増やすことができませんでした。また石炭も、豪州の炭鉱における障害や中国向けの需要増加で電力会社による大量の追加購入が難航しました。

    これらの悪条件が重なり電力会社がLNGの不足を解消できず、苦肉の策としてLNG火力発電所の稼働を切り下げざるを得なくなりました。今後、気温の上昇とともに電力需要は減少し、LNGの生産基地での障害も解消に向かうと見込まれており、電力会社によるLNG不足もじきに解消されると見込まれています。しかし、原子力発電所の運転再開が限られるなか、日本の電力会社はしばらくLNGを電源の中心に据えることが確実視されています。このため、ひとたび今回のような条件が重なれば、再び電力危機に陥る可能性が高いと見られます。




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