脱炭素へ向けた政府の方針

    2020年12月25日、政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しました。菅首相が就任後初の10月の所信表明で「2050年ゼロエミッション」を宣言した流れを受け、経済産業省が各省庁と連携して策定したものです。この中には2050年カーボンニュートラルの実現、成長戦略の枠組み、主要政策ツール、関連産業の分野毎の実行計画が詳しく明記されています。グリーン成長戦略とはどういうものでしょうか。

    グリーン成長戦略とは政府の言葉を借りると、「カーボンニュートラルを実行するのは並大抵ではない」けれど、産業界が「大胆な投資をし、イノベーションを起こし、新しい時代をリードしていく」といった挑戦ができるように、政府が全力で応援する役割を担いますよ、ということです。そのために、具体的な見通しを立て、民間企業が挑戦しやすい環境を整えていくといいます。

    そして、成長戦略として育成していく脱炭素に取り組むべき産業分野を具体的に掲げています。まずは電力部門をその対象の大前提として挙げています。温室効果ガス排出の8割以上を占めるのはエネルギー分野だからです。最大の電源としては、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を導入します。2050年に100%は現実味がないから、50~60%を参考値として掲げています。再エネでは成長戦略として洋上風力、蓄電池産業を育成していきます。再エネ以外の電源は、水素、原子力、火力発電が担います。水素発電では水素産業を創出します。カーボンリサイクルや燃料としてのアンモニア産業の創出も同時に推し進める構えです。火力発電は、二酸化炭素(CO2)回収の技術革新とセットで、最小限は使用するのが現実的とみています。原子力は安全性に優れた次世代炉を開発して使用の低減化を図りながらも最大限利用していくとのことです。水素、アンモニア発電で10%、原子力とCO2回収を前提とした火力で計30~40%といった参考値を示しています。

    電力部門以外の脱炭素の対象としては電化を中心に据えています。熱需要にはやはり水素などの脱炭素燃料と化石燃料からのCO2回収・再利用で対応していくとのことです。電化で電力需要も増えるので、省エネ産業分野を成長分野として育成していくようです。製鉄など製造過程の変革に必要な水素を扱う産業、電動化やバイオ・水素燃料の利用へ転換していく運輸業、ネット・ゼロ・エネルギー化や電化、水素化、蓄電池活用が期待される住宅・建築物関連といった産業も育成すべき成長分野として挙げています。また、カーボンニュートラルを目指すにはエネルギー需要構造の実現だけでなく、電力ネットワークのデジタル制御が大事だとして、グリーンとデジタルを両輪とみなしています。デジタルインフラの強化のため、半導体、情報通信産業も成長分野として育成すべき対象です。これら全ての分野の技術開発や社会実装、量産投資によるコスト低減を目指すことになり、この戦略で、2030年に年額90兆円、2050年には同190兆円の経済効果を見込んでいます。

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