カーボンゼロに向けての課題

    経済産業省は、2021年夏を目途に新しいエネルギー基本計画を策定する方針です。2018年7月に閣議決定された現行の「第5次エネルギー基本計画」は、2030年度の発電電力量に占める電源構成(エネルギーミックス)について、原子力発電を20~22%、再エネを22~24%、石油・石炭・液化天然ガス(LNG)など火力発電を56%と定めています。これは、2015年に経済産業省が作成した電源構成の目標をそのまま受け継いだものであり、すでに国際的な潮流とはかけ離れたものになっています。ちなみに現計画では、再エネを初めて「主力電源」と明記したものの、日本の2020年の再エネの導入割合は、水力を含めて21.8%、水力を除くと12.4%に止まり、水力を除くとイギリス42.6%、ドイツ42.2%、スペイン31.8%、イタリア25.3%、米国12.8%となり、わが国は主要国の中では第6位で、依然として大きな隔たりがあります。

    国立環境研究所によれば、日本の2019年度の温室効果ガスの総排出量(速報値)は、二酸化炭素(CO2)換算で11億600万トンです。内訳は、製造業2億6,150万トン(23.6%)、運輸1億9,940万トン(18.0%)、業務ほか6,460万トン(5.8%)、家庭5,340万トン(4.8%)ですが、最大の排出源はエネルギー転換部門(事業用発電、石油・石炭製品製造、ガス製造)の4億3,260万トンで全体の4割弱を占めています。排出量自体は、2013年の13億1,700万トンをピークに年々減少傾向にあるものの、ゼロカーボン社会に向け社会構造をドラスチックに変えていくには、最大の排出源であるエネルギー転換部門(とりわけ発電部門)の電源構成を再エネ電源に変えることが必要条件です。

(出所)国立環境研究所

(注)エネルギー転換部門は、事業用発電、石油・石炭製品製造、ガス製造など


日本の温室効果ガス排出状況(排出源別)

(出所)国立環境研究所


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