コロナ禍による石油製品需給・市況への影響

1.2020年の石油製品需給への影響

(1)燃料油販売/前年比8.4%減に拡大、輸送用燃料需要の減少が顕著

    資源エネルギー庁が1月29日に発表した石油統計速報によると、2020年の燃料油販売は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため人の移動や経済活動が停滞した結果、1億5,135万klとなり、前年比1,396万kl(8.4%)減少しました(19年は2.7%減)。

    油種別では、コロナの影響で、4~5月に全国を対象とした「緊急事態宣言」が発令。その後も第2波、第3波といった再拡大もあり、帰省や行楽の手控え等による移動・輸送用燃料需要の落ち込みが顕著となったことで、燃料油需要の約3割を占めるガソリンは45,774千kl(前年比▲7.8%)、ジェット燃料は3,271千kl(前年比▲37.1%)となりました。移動・輸送用燃料需要の中でも、軽油は輸送量や宅配便の取扱個数などは堅調な動きを見せましたが、インバウンド客や団体旅行の観光バス需要が消失したこともあり、31,881千kl(前年比▲6.2%)と4年ぶりのマイナスとなりました。

    その他の油種も、ナフサはエチレン生産量の減少の影響を受け 40,056千kl(前年比▲8.5%)、A重油及びB・C 重油は経済の落ち込みによりそれぞれ 10,040千 kl(前年比 ▲5.5%)、6,268千kl(前年比▲19.1%)と減少。灯油は巣ごもり需要の増加があり、14,063千kl(前年比▲2.0%)の減少に止まりましたが、3年連続のマイナスです。

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(出所)資源エネルギー庁資料


(2)軽油輸出/大幅減

    2020年の輸出量は、石油需要減少に合わせた生産調整の影響で、21,311千kl(前年比 ▲37.4%)と大幅に減少しました。

    わが国の製品輸出は、ジェット燃料やバンカー重油(C重油)のうち、国内で国際線航空機・外国船舶に対して供給した製品が統計上輸出扱いとなっていますが、それを除けば実質的な輸出製品の主力は軽油です。軽油の輸出先は、製油所の閉鎖によりショートポジション(原油処理量<販売数量)となっているオーストラリア向けが中心となっています。20年は3,963千㎘(前年比▲60.0%)と大幅減となりました。

2.ガソリン市況への影響

(1)ガソリン小売価格/原油CIF・卸価格に連動

    2017年4月にはJXエネルギーと東燃ゼネラル石油が経営統合し、国内の精製能力の55%を占めるJXTGエネルギーが発足しました。さらに2019年4月には出光興産と昭和シェル石油が経営統合したことにより、石油元売会社は5社に集約されました。これらの業界再編を機に、原油コスト、卸価格の製品小売市況への連動性は、大きく改善され、元売会社、小売業者ともに、在庫評価の問題を除けば、収益の安定的確保は大幅に改善されました。

    下図は2018年1月から20年12月の間における原油CIF価格、ガソリン卸価格、小売価格(月平均)をグラフ化したものですが、3者の価格がほぼ連動していていることが読み取れます。今回のコロナ禍の下、20年2月から5月にかけて、原油価格の急落等を受けて、ガソリン小売価格は15週連続して下落(累計22円の下落)しました。その後、上昇に転じましたが、9月3週以降11月3週にかけて9週連続して緩やかな下落(累計3円強の下落)が続きました。11月後半から12月にかけて再び上昇に転じ、年明け以降も緩やかな上昇傾向が続いています。

ガソリン小売価格、卸価格、原油CIF価格の推移
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(2)原油価格・為替の変動とガソリン卸価格・小売価格への影響

    ガソリン小売価格は、基本的に、前週の指標原油価格と為替レートの変動に基づいて算出される卸価格の改定に、SS店頭の小売価格は、2~3週のタイムラグを伴いつつも、ほぼ忠実に追随されていたものと評価できます。

    下表は、2019年12月と2020年12月の1年間における原油CIF価格、為替レートの変動のガソリン卸価格及び小売価格への影響を示したものです。

    コロナ禍による大幅な需要減の影響で、1年間で原油CIF価格は22.67ドル/バレルと大幅下落し、為替レートの4.81円/ドルの円高も加わり、原油コストは16.9円/ℓ下落しました。

    一方、この間、ガソリン卸価格は14.0円/ℓ、ガソリン小売価格も13.1円/ℓ下落しました。ガソリン小売価格の下落幅が原油コストや卸価格の下落幅に比して小幅となっていますが、タイムラグ等を考慮すればほぼ妥当な下落幅と思われ、原油コストの変動を受けた卸価格の下落幅に準じた下落となっていると評価できます。

原油価格・為替の変動とガソリン卸価格・小売価格への影響
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(出所)各種資料を基に作成


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