資源エネルキー庁が発表した2020年度の石油製品需給概要によると、燃料油販売は 1億5,154万㎘で、前年度比6.2%減となりました。
自動車の燃費改善や電気・ガスへの燃料転換などの構造的な需要停滞が続く中で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う人の移動制限や経済活動の落ち込みによる影響が加わった結果です。2018年度は4.1%、19年度は3.7%のマイナスとなりましたが、20年度はコロナの影響で減少率が拡大しました。
2021年度は、政府の見通し(2021年3月策定の「石油製品需要見通し」による)では人の移動や経済活動の回復に伴って持ち直し、1億5,437万㎘、前年度比2%程度増と予想されていますが、中期的には、自動車の燃費改善や産業用燃料の転換等による構造的な需要押し下げが続くと見込まれています。
また、石油需要は「コロナ禍+2050年ネットゼロ目標*」の影響で、コロナ禍以前の減少トレンド(年率▲2%前後)にすら戻れない可能性もあるともいわれています。 (注)*政府は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指している。
①製品別には、移動・輸送用燃料の需要の落ち込みが顕著となりました。
燃料油需要の約3割を占めるガソリンは4,523万㎘で、前年度比7.9%減に拡大、コロナ禍により、4月~5月に1回目の緊急事態宣言が発出されました。その後、感染拡大がやや収まったものの、10月以降、全国的に感染が広がり、交通需要が減少したことなどが影響しました。
軽油は3,187万㎘、5.3%減に留まりました。コロナ禍により通信販売の増加などで、輸送量や宅配便の取扱個数が増加しましたが、それ以上にコロナ禍の影響が大きかったと思われます。
灯油は1,450万㎘、6.4%増となりました。冬季シーズンは昨年よりも気温の低い日が多く、また、コロナ禍で巣籠もり需要が高まったことなどがプラス要因となったとみられます。ナフサはエチレン生産量の減少の影響を受け、4,032万㎘、5.2%減。
ジェット燃料油は273万㎘で、46.9%のマイナス。コロナ禍により飛行機の減便等が影響し、大幅な減少となりました。
A重油及びB・C重油は経済の落ち込みが影響したものの、A重油は1,023万㎘、0.7%の微増、B・C重油は666万㎘、9.8%減となりました。
②国内需要は、2021年度以降、持ち直すと見込まれているものの、構造的な需要下押しは続くとみられています。政府の見通しでは、重油を除くとガソリンの落ち込みが顕著で、2021年度は4,643万㎘と前年度比2.6%増となるものの、2022年度以降、毎年2%強の減少傾向となり、2025年度には4,210万㎘と2020年度比6.9%減と予想されています。
2020年度の輸出量は、新型コロナウイルスの感染拡大による石油需要減少に合わせた生産調整の影響で、1,848万㎘、前年度比45.0%の大幅減となりました。
日本の製品輸出の主力は軽油ですが、2020年度は68.0%減の290万㎘に止まりました。 軽油輸出はオーストラリア向けが中心となっています(2019年度実績は906万㎘のうち約50%)。
2021年度の燃料油輸出量は、国内石油需要の持ち直しに合わせた生産量の増加に伴い、増加が見込まれます。中期的にもアジアの石油需要増加等を背景に、輸出量は増加すると期待されています。
区分 | ガソリン | ナフサ | ジェット 燃料油 |
灯油 | 軽油 | A重油 | B・C重油 | 重油計 | 燃料油計 | |
生産 | 2019年度 | 48,960 | 17,146 | 15,619 | 13,240 | 41,190 | 11,344 | 15,912 | 27,256 | 163,411 |
2020年度 | 43,478 | 12,462 | 6,438 | 13,090 | 32,671 | 11,324 | 12,447 | 23,771 | 131,910 | |
前年度比(%) | 88.8 | 72.7 | 41.2 | 98.9 | 79.3 | 99.8 | 78.2 | 87.2 | 80.7 | |
輸入 | 2019年度 | 2,470 | 26,416 | 209 | 1,568 | 797 | 123 | 457 | 580 | 32,040 |
2020年度 | 3,014 | 28,853 | 79 | 2,718 | 1,449 | 115 | 606 | 721 | 36,834 | |
前年度比(%) | 122.0 | 109.2 | 37.8 | 173.3 | 181.8 | 93.5 | 132.6 | 124.3 | 115.0 | |
販売 | 2019年度 | 49,107 | 42,550 | 5,151 | 13,627 | 33,657 | 10,156 | 7,378 | 17,534 | 161,626 |
2020年度 | 45,233 | 40,323 | 2,733 | 14,498 | 31,869 | 10,226 | 6,658 | 16,884 | 151,540 | |
前年度比(%) | 92.1 | 94.8 | 53.1 | 106.4 | 94.7 | 100.7 | 90.2 | 96.3 | 93.8 | |
輸出 | 2019年度 | 3,118 | 3 | 10,608 | 996 | 9,068 | 1,809 | 7,984 | 9,793 | 33,586 |
2020年度 | 2,451 | - | 3,780 | 1,300 | 2,900 | 1,292 | 6,760 | 8,052 | 18,483 | |
前年度比(%) | 78.6 | - | 35.6 | 130.5 | 32.0 | 71.4 | 84.7 | 82.2 | 55.0 |
2019年度 実績 |
2020年度 速報値 |
見通し | |||||
2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | |||
ガソリン | 49,107 | 45,233 | 46,427 | 45,348 | 44,424 | 43,218 | 42,104 |
92.1 | 102.6 | 97.7 | 98.0 | 97.3 | 97.4 | ||
ナフサ | 42,550 | 40,323 | 40,550 | 40,275 | 39,970 | 39,622 | 39,231 |
94.8 | 100.6 | 99.3 | 99.2 | 99.1 | 99.0 | ||
ジェット燃料油 | 5,146 | 2,733 | 4,255 | 4,749 | 4,952 | 5,037 | 5,015 |
53.1 | 155.7 | 111.6 | 104.3 | 101.7 | 99.6 | ||
灯油 | 13,621 | 14,498 | 13,978 | 13,710 | 13,394 | 13,073 | 12,743 |
106.4 | 96.4 | 98.1 | 97.7 | 97.6 | 97.5 | ||
軽油 | 33,657 | 31,869 | 32,607 | 32,563 | 32,561 | 32,317 | 32,114 |
94.7 | 102.3 | 99.9 | 100.0 | 99.3 | 99.4 | ||
A重油 | 10,156 | 10,226 | 9,994 | 9,676 | 9,467 | 9,115 | 8,821 |
100.7 | 97.7 | 96.8 | 97.8 | 96.3 | 96.8 | ||
一般用B・C重油 | 5,303 | 4,786 | 4,686 | 4,425 | 4,208 | 3,987 | 3,793 |
90.3 | 97.9 | 94.4 | 95.1 | 94.7 | 95.1 | ||
燃料油計 (電力用C重油を除く) |
159,540 | 149,668 | 152,497 | 150,746 | 148,976 | 146,369 | 143,821 |
93.8 | 101.9 | 98.9 | 98.8 | 98.3 | 98.3 | ||
電力用C重油(参考) | 2,091 | 1,872 | 1,872 | - | - | - | - |
89.5 | 100.0 | ||||||
燃料油計(参考) | 161,631 | 151,540 | 154,369 | - | - | - | - |
93.8 | 101.9 | ||||||
(注)①燃料油計(参考)は、上記燃料油計に電力用C重油の2020年度実績見込みを加えた数値 ②2020年度は、実績見込みから速報値に変更 ③各油種欄の下段は対前年度比 |