「地球温暖化対策推進法」の一部改正について

1.はじめに

「地球温暖化対策推進法(温対法)」の一部改正が2021年5月26日、参院本会議で、採決され、全会一致で可決・成立しました。

    今回の改正の全体像は、以下の3点です。

①パリ協定・2050年カーボンニュートラル宣言等を踏まえた基本理念の新設、

②地域の脱炭素化に貢献する事業を促進するための計画・認定制度の創設、

③脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進等

    日本はパリ協定に定める目標等を踏まえ、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。この達成に向けた「整合的で、野心的な目標」として、2021年4月には2030年度の温室効果ガス削減目標を「2013年度から46%削減し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていく」と表明しました。政府はこれらの目標を達成するための施策の具体化に向けた検討を加速しています。

    環境省は2022年4月の施行を視野に、今後詳細な制度設計を進めることとなっています。

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カーボンニュートラルに関する最近の議論の動向

(出所)経済産業省資料


2.改正の経緯

    温対法は1998年に成立し、以降、6回の改正が行われてきましたが、今回の改正は7回目となります。今回までの改正の経緯は以下の通りです。

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(出所)環境庁資料を基に作成


3.法律改正のポイント

(1)パリ協定・2050年カーボンニュートラル宣言等を踏まえた基本理念の新設

    パリ協定に定める目標を踏まえ、2050年までの脱炭素社会の実現、環境・経済・社会の統合的向上、国民を始めとした関係者の密接な連携等を、地球温暖化対策を推進する上での基本理念として規定する。

(2)地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業を推進するための計画・認定制度の創設

    地方公共団体実行計画に、施策の実施に関する目標を追加するとともに、市町村は、地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業(地域脱炭素化促進事業)に係る促進区域や環境配慮、地域貢献に関する方針等を定めるよう努めることとする。

    そして、市町村から、地方公共団体実行計画に適合していること等の認定を受けた地域脱炭素化促進事業計画に記載された事業については、関係法令の手続のワンストップ化等の特例※を受けられることとする。

※自然公園法・温泉法・廃棄物処理法・農地法・森林法・河川法の関係手続のワンストップサービスや、事業計 画の立案段階における環境影響評価法の手続(配慮書)の省略

(3)脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進等

    企業の温室効果ガス排出量に係る算定・報告・公表制度について、電子システムによる報告を原則化するとともに、これまで開示請求の手続を経なければ開示されなかった事業所ごとの排出量情報について開示請求の手続なしで公表される仕組みとする。

    また、地域地球温暖化防止活動推進センターの事務として、事業者向けの啓発・広報活動を追加する。

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今回の改正案の位置付け
(赤字は今回改正案の主な内容)

(出所)環境庁資料


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