脱石炭なのに価格が高騰?

    世界的に脱炭素の流れが強まり、多くの国が石炭火力発電からの撤廃を打ち出しているなかで、石炭価格の高騰が続いています。本来なら需要が後退し、価格が下落しても不思議ではない状況。なぜ石炭価格は値上がりを続けているのでしょうか。

    まずは発電用石炭(一般炭)の価格推移を見てみましょう。日本向け一般炭価格の指標となる豪州ニューカッスル積みのスポット価格は、新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広まりつつあった昨年4月は、おおむねトンあたり50ドル台で推移していました。ところが昨年後半以降は上昇基調をたどり、今年1月は70~80ドル台、5月には節目となる100ドルを突破。その勢いは衰えず、8月に150ドルを超え、9月末にはついに200ドルの大台を記録しました。急速な値上がりは発電事業者の収益を圧迫し、電力料金への転嫁という形で私たち消費者にも大きな影響を与えています。

    価格高騰の要因としてまず挙げられるのが、世界的な供給不足です。例えば中国では、環境規制の高まりを受けて国内の石炭生産が大幅に減っています。また、豪州やインドネシアといった石炭の主要な輸出国では、各国からの投資が大きく減少し、新たな炭鉱開発や炭鉱のメンテナンスが滞るといった事態が発生しているようです。

    一方、中国やインドでは、国内の電源構成に占める石炭火力の割合が依然として60%を超えており、まだまだ石炭需要は堅調です。新型コロナの感染がようやく落ち着きを見せていることから、10億人を超える人口を抱える両国にとって、経済を支える石炭は欠くことのできない燃料なのです。さらに、このところの液化天然ガス(LNG)価格の高騰を受けて、発電燃料として石炭を買わざるを得ない発電会社もあるようです。

    こうした複合的な要素が重なって、まだまだ石炭価格の高騰が続くとみる専門家も少なくないようです。

豪州ニューカッスル積み石炭価格
※画像クリックで拡大します。




クイズに挑戦

目次に戻る >