COP26、石炭火力は「段階的削減」に

    英国グラスゴーで11月13日まで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、石炭火力発電の扱いを巡って最後まで参加国間で激しい議論が続きました。当初、議長国の英国を中心に石炭火力を「段階的廃止」にするとの宣言を目指していたものの、国内の石炭火力比率の高いインドなどから強硬な反対の声が挙がり、最終的に報告書には「段階的削減」との表現が盛り込まれました。環境対策としては実質的に後退する結果になったとの批判も聞かれます。

    2021年現在、インド国内の電源構成のうち、石炭火力が占める割合は70%に迫る勢いです。急速な経済成長を支えるため、当面は主力の石炭火力発電を一段と拡充する必要があると判断したとみられます。同様に経済発展が続く東南アジア諸国でも、液化天然ガス(LNG)や石油に比べて一般的に価格の安い石炭を発電燃料として活用したいとの思惑が根強いようです。こうした国々にとって、段階的とはいえ、石炭火力の廃止を突き付けられるのはまさに死活問題だったと言えるかもしれません。

    全会一致を原則とするCOPでは、1カ国でも反対があれば交渉が決裂するとあって、英国は議長国として苦渋の選択をせざるを得なかったといえます。

    今回の決定は、やはり石炭火力発電比率が6割を超える中国、さらには3割近くを占める日本の関係者にとっても胸をなでおろす結果になったと言えます。日本でも10月22日に閣議決定した「第6次エネルギー基本計画」の中で、2030年時点の電源構成のうち、再エネ比率が36-38%程度と伸びたとはいえ、石炭火力が依然として19%程度を占めています。原子力発電所の再稼働、新増設など賛否が大きく割れる問題の解決にはまだ時間がかかりそうで、しばらくは化石燃料に依存する体制は続きそうです。もちろん、この間も二酸化炭素の排出を抑えたり、活用する新たな技術の開発に注力する必要があるでしょう。

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出所:IEA Montly Electlicity Statistics 2018-2020を基に作成

※1 2020年7月のデータを中心に2018年の平均値も一部採用。
※2 他の可燃性エネルギー:バイオガス、産業廃棄物を含む。
※3 他の再エネ:地熱、固体・液体バイオマス含む。




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