【石炭】9、欧州の石炭事情

    環境問題に対する意識が高い欧州では、過去10年ほどで石炭の消費量が大きく減少しています。最大の消費国であるドイツの2020年の消費量は7.370万余トンと、2010年比で42.8%減少しました。ドイツは2038年までに国内すべての石炭火力発電所を撤廃する目標を掲げています。また、消費量第2位で産炭国でもあるポーランドの20年の消費量は6,670万トン余で、同じく27.6%少なくなっています。

    2020年は、イギリスを含む欧州全域で、10ギガワットを超える発電設備が稼働を停止したとの報告もあります。欧州では温室効果ガスの排出量取引制度が確立されており、石炭火力を多く所有している電力会社は、多額のコストを負担せざるを得ない状況です。電力供給義務がある一方で、環境問題にも対処する必要があり、石炭火力から風力や太陽光といった再生エネルギーによる発電設備への切り替えを急ぐ電力会社が増えています。

    また、欧州の一部の損害保険会社は、石炭火力の売上高が一定水準以上である電力会社とは保険を契約しないことを決めています。保険に加入できなければ、実際に石炭火力発電所を新設することはできなくなるでしょう。

    現在の欧州連合(EU)は、もともと1951年に設立した欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が起源となっています。当時の西ドイツやフランス、イタリアなど6カ国が、石炭や鉄鋼の共同市場を創設することを目的に発足させました。ECSCの設立から70年を経たいま、その石炭の消費が急速に減少していることは、大きな時代の転換点といえるかもしれません。

欧州の石炭消費上位国(百万トン)
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出所:熱量ベースによるBP統計をもとに
日本エネルギープランナー協会がトンベースに換算


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