広大な面積を誇る中南米地域ですが、石炭の世界ではその存在は決して大きくはありません。生産量、消費量ともに、世界に占める割合はごくわずかです。
まず消費量を見てみましょう。BP統計によると、南米の大国であるブラジルの2020年の消費量は約2,300万トン。日本の8分の1程度にとどまり、世界シェアは0.4%に過ぎません。ブラジルでは水力発電が7割近くを占めている事情がありますが、火力発電のなかでも液化天然ガス(LNG)や石油のほうが比率が高く、石炭の需要は高くないのが実情です。ちなみにブラジルに続いて多かったのがチリで約1,200万トンでした。
一方、生産量はどうでしょうか。同じくBP統計によると、中南米で最大の産炭国はコロンビアで、2020年の石炭生産量は約5,060万トンでした。新型コロナの影響もあり、前年を4割近くも下回りました。ブラジルは20年の生産量は前年比5.6%増の620万トンでした。
日本政府は一時、石炭の調達先の多様化を求め、コロンビアに注目をしていました。しかし、そのコロンビアでも石炭生産は頭打ちになっています。また、日本との地理的な遠さもネックとなっており、発電や製鉄時だけでなく、運搬時にも二酸化炭素をより多く排出してしまう懸念があるため、この計画はすでに役割を終えていると言えるかもしれません。