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マレーシア=乱脈経営の1MDBが火力発電会社の全株式を中国企業に売却

乱脈経営で危機的な状況に追い込まれるマレーシア国営投資会社「ワン・マレーシア開発」(1MDB)。同社はこのほど、火力発電などを手がける関連会社エドラ・グローバル・エナジーの全株式を中国国営の原子力大手「中国広核集団(CGN)」に売却すると発表した。1MDBによると、売却額は98億リンギ(約2,800億円)で、同社は売却益を金融機関などへの借入金返済に充当する予定という。

 ところで、マレーシアではこの1年ほど、不透明な取引を通じて、ナジブ・ラザク首相の個人口座に約7億ドル(840億ドル)の大金が振り込まれていたとのスキャンダルが政財界を揺るがしている。事の発端は、国営投資会社の1MDBの乱脈経営に関連する捜査だった。その過程でナジブ首相絡みの疑惑が明らかとなった。

 1MDBは、2009年にナジブ首相が主導して設立されたファンドで、しかも首相自ら経営諮問委員会の委員長に就任している。現職の首相に対する疑惑が浮上した理由は、いくつかのルートを通じて首相の個人口座に多額の現金が振り込まれたからだ。この疑惑については2015年7月2日、『ウォール・ストリート・ジャーナル』(電子版)が大々的に報じた。

 スキャンダルが国民の不信感を煽るなか、首都クアラルンプールなど各地で、首相退陣を求めるデモが繰り広げられているが、野党勢力の足並みの乱れもあり、政権基盤は揺らいでいない。ナジブ首相は、入金された約7億ドルが「寄付金(ドナー)であり、1MDBによるものでない」と潔白を主張する。1MDBには経営悪化にともない、今年3月に公的資金が注入された。事の重大性を踏まえると、もはや1企業の経営問題ではなくなっている。

 一方、中国国営のCGNが1MDB関連会社の全株式を取得した背景には、南シナ海での人工島造成で、米国や東南アジア諸国から批判を浴びる中国が、当事国の一国であるマレーシアのナジブ首相を支援することで、南シナ海問題で対中批判を封じ込める狙いがあるようだ。また、中国の原子力大手がマレーシアでの発電事業に参入することで、将来的に東南アジア地域での原子力ビジネスの拠点にする思惑があるとの指摘も出ている。CGNが全株式を取得するエドラは、国内5カ所、海外8カ所に発電所を保有するという。

2015.12.04